■乳首のススメvol,3■



”はあ、はあ、はあ…っ”
学生会室のドアは開いていて、俺はほっとして中に入った。
だけど、やはり誰もいないようだった。
まだ5時限目の途中だったから、誰かいるとは思わなかったけど…。
俺は先に、この体操着を着替えようと、自分の制服を探す。
ここで中嶋さんに無理矢理着替えさせられたから、ここにおいたままに
なっているはず。
長机や、棚の下を探してみる。
あれ…ないっ。
どこを探しても、俺の制服は見つからない。
6限目に出るつもりはなかったけど、でも、このままでずっといるのは…。
だけど、俺はもう、身体をこれ以上動かすのがつらくなってきて椅子に座り込んだ。
意識しなくても、もう乳首は立ちきっていて、熱くしびれて感覚が麻痺していた。
俺、このままで、6時限目が終わるまで中嶋さんを待っていなくちゃ
いけないんだ。
俺、無理かもしれない…。
こんな状態で1時間以上も待てないよ、中嶋さん。
剥がしてしまいたい。
でも――
「中嶋さん」
俺は誰もいない学生会室で名前を呼んだ。
「…中嶋さん」
何も答えてくれない。
早く、中嶋さんの手で、これを剥がしてほしい。

俺の座った椅子は、中嶋さんがいつも休憩するときに座っているものだった。
王様がいないとき、いつも中嶋さんはここで長い足を投げ出して座り、たばこを吸う。
禁止されているのに、しかも学生会室で吸うなんて、って思ったけど、
そうやってゆったりとくつろいでいる姿は、近寄りがたい、というか
俺の知らない中嶋さんみたいで、声を掛けられなかった。
中嶋さんの部屋には入ったことがないけど、お酒もたくさん持ってるって聞いた。
本当なのかはわからない。だって見たことがないし。
中嶋さんは俺の部屋にはよく来るけれど、中嶋さんの部屋にはまだ
入れてもらったことがないんだ。
ちょっと寂しいけれど、どうしてって聞くこともできないし。
だから俺と中嶋さんが一番一緒に過ごすのは、この学生会室ばかりだった。
初めていやらしいことをされたのも、2人きりのときに 時々キスしてくれるのも、
ここで、中嶋さんのあれ――を咥えたのも。
そしてこの椅子の上で、俺は中嶋さんに跨って。

「あ…」
足を動かすと、パンツが擦れて、そこがびくっと動いた。
このまま短パンを履いてたら、七条さんのなのに本当に汚してしまう。
俺は思い切って短パンを脱いだ。
体操着の上着と、パンツだけの格好になる。
長い上着の下で、自分のパンツが濡れているのが見えて、俺は目をそむけた。
顔に血が上ってくる。
ここに、座らなければよかったかもしれない。
中嶋さんの匂いがする。
俺はぎゅっと目をつぶった。
駄目だ、考えちゃ、駄目だ。
――俺をつかまえて、力強い手で押さえ込み、被さってきたときの匂い。

だめだ。
「………ん…っ」
右手が、俺の下半身にのびていき、パンツの布の上をそろそろと撫でる。
左手で、上着の下をくぐり、湿布が貼られた乳首にそっと触れる。
「っ…!」
尖りきってる。
麻痺してたはずのそこは、敏感になりすぎていた。
――こんなことして、中嶋さんに怒られるよ…!
だけどそう思えば思うほど、高ぶっていく。
だめだって思ってるのに。
中嶋さんに謝って、ずっと乳首を立たせていたから許してくださいって
言わなきゃいけないのに。
一人でしたら、駄目だって言われたのに。
手が、止まらない。
パンツの布の上から、立ちきった棒の裏側から握りこむと、
その刺激に目の前が一瞬暗くなって目を閉じた。全身が緊張する。
直に扱いたら、きっとすぐにイってしまう。
こみあげた射精感を我慢して、上着を両手でめくり上げた。
両方の乳首に触れる。
俺は目を閉じて、自分が想像する世界に入り込もうとしていた…。


その時。
「そんな格好で何してる」
突然降ってきた声に俺は飛び上がった。
とっさにめくりあげた上着を引きおろし、足を閉じる。
うそ!!
俺、俺こんなとこ、見られた!!

声のした方を見上げると、本棚にもたれかかって。
――中嶋さんが、俺を見下ろしていた。

「……!!!」
何も思いつかない。頭が真っ白になってる。
中嶋さんが無言で俺に近づいてきた。
その足音に我に返り、今俺はとんでもないことをしてたんだっていう罪悪感が
一気にわきあがってきて、俺は目を合わせられなくてうつむいた。
中嶋さんの靴が、椅子の上で膝をかかえてうずくまる俺の前までくる。

上を、見られない。
何っていえばいいんだよ。
こんな言い訳も出来ない状態を見られて。
6時限目が終わるまで、誰もこないって思ってたのに。

「…困ったやつだ。我慢できなかったのか」
俺は何も言えなくて、ただうつむいていた。
中嶋さんが動く音がする。
何も、言わない。
俺はそっと、見上げて中嶋さんを見た。
中嶋さんは、俺が脱ぎ捨てた体操着の短パンを拾い上げ、興味深そうに見ていた。
「いやらしい匂いがするな」
「そ、それは…!!」
「啓太は短パンを濡らしながら体育の授業を受けていたのか?」
冷たく響く声。
これから続くだろう罵りに、俺は耐えられそうになかった。
「ご、ごめんなさい…!
俺…俺っ!我慢、できなくて…っ」
目に熱いものがこみあげてきて、たまらず叫ぶ。
硬直したままうつむいているといきなり、両肩をつかまれた。
驚いて見上げたときには、びっくりするほど中嶋さんの顔が間近にあって。
いつもの匂いが鼻をかすめる。髪が頬に触れる。それだけで俺は目をギュッと閉じてしまう。
俺の顔をかすめて、中嶋さんが低く落ち着いた声で、耳元に囁いた。

「そのまま…自分でするんだ」
「っあ…!」
身体に響く。
言われた言葉が理解できない。
「…え……、あ、ああっ!!」
いきなり左の乳首をつかまれて、その刺激に俺の身体は反り返った。
「や…やめて…!」
「俺はここを弄ってやる。啓太は自分で扱くんだ」
「そんな…!!」
「できないわけないだろう?さっきまで一人で楽しんでいたんだからな」
怒ってるんだ。
俺、我慢できなくって、しちゃいけないって言われたのにしてしまったから…。
「ごめんなさいっ、俺どうしても我慢できなかったんです…っ。
だってこんな、こんなものつけてたら…っ!」
「言い訳をするのか?」
何も言えない。
湿布を貼ったのは中嶋さんだけど、そんなことをされたのは俺が怒らせてしまったから。
「ごめん…なさい…」
「そう思うなら、自分で扱くんだ。
オナニーを俺に見せてみろ…啓太」
その言葉に、カアッと血が上る。
「でも、…っ」
「何だ」
「は…ずかしい…です…っ」
く、と中嶋さんが耳元で笑って、その唇が耳の下を撫でる。
ゆっくりと唇をおしつけられて、俺のソコ――がもう刺激を期待して、びくり、と脈打った。

 本当に、中嶋さんは乳首しか触ってくれなかった。
だけど俺は、待ち望んでいたその手に、恥ずかしいほどに感じてしまっていた。
湿布ごしに指先で触れ、小さく揺らされるだけで快感で身体が痺れる。
椅子に座った俺の上にかがみこみ、中嶋さんの唇が首筋を行き来して。  
パンツを膝までおろし、右手で握りこんだ自分のソコにはじめはこわごわと触っていたのに、
今はただ、中嶋さんの与えてくれる刺激を追いかけて、無心で手を動かしてしまっていた。

「あぁ…、…ん…あ…」
「啓太は、先っぽばかりを弄るんだな」
「や…!見ないで、下さい…っ!」
「そんなに皮をひっぱって、そんなにそこが気持ちいいのか?」
「やぁ…っ」
「どんどん出てくるな。すごい量だ」
握りこむ指先がヌルヌルして、いやらしい音がする。
自分でするときよりも、たくさんの先走りの液が出てしまってる。
俺は、顔を背けたままいやいやと首を振った。
そこを観察している中嶋さんを見ることなんてできなかったから。
でも、そこを見てるんだって、じっと観察するような視線を感じるだけで。
見られたくなんかないのに。
恥かしくて死にそうなのに。
見て欲しくて、俺、腰を突き出していた。
「そんなに腰を揺らすな。椅子から落ちるぞ」
「い…っ、あっ…」
「啓太は、授業中も弄っていたのか?」
「し、して…ませ…っ」
「他の男に見られて感じたのか?
それともわざと見せつけていたのか?誰か俺の乳首を弄ってくれないだろうか、
いやらしくここを立たせている俺を見てくれないだろうか…」
「そ…っそんなことしてませんっ」
乳首に触れていた手が止まる。
「そして隠れてパンツの上から触ったのか?それとも乳首を弄ったか?
…それとも、他の男の身体に押しつけて感じていたのか?」
「う…っ、う…」
確かに俺、和希に触れられて感じてしまって、
乳首も、触って。
だけど、中嶋さん以外の人に触ってほしいなんて思ってない…!
「答えられないのか?」
「ぃやぁ…っ! 」
唯一触れてくれる乳首から手を離されて、俺は半泣きになっていた。
「…さわ、りました…っ、俺、自分で…っ」
「他の男に触ってもらったのか」
「…っ」
「遠藤か」
「ちが…っ!ちがいます!和希は、俺の背中押しただけです…っ」
「それだけで感じたのか。他の男に」
俺は必死で首を振った。涙が溢れてくる。
ひどい――俺は、ただ。

「中嶋さんが欲しかったんです…っ!、
俺…っ中嶋さんのことばかり 考えて…、欲しくて、たまらなくて…っ。
俺、他の人になんて、絶対いやです…っ!」
しばらくの沈黙。そしてため息が聞こえる。
「そこまでわかっていて…」
そう呟くと、中嶋さんは小さく笑って、俺の乳首への愛撫を再開した。
恐る恐る見上げると、中嶋さんが熱い瞳で俺を見つめていて、胸が高鳴った。
金縛りにあったみたいに、動けない。
俺、この目に見つめられただけで――どうしていいかわからなくて。
でも、うれしくてたまらなくて。
「好きです…っ、俺、中嶋さんのこと…」
うれしそうにする中嶋さんを見るだけで、泣きそうな程うれしい。
中嶋さんが俺の前でしゃがみこんで、顔を俺の胸に寄せる。
「な、なかじ、まさん…?」
湿布の辺りにする濡れた舌の感触に身体が跳ねる。
歯が湿布ごしに当たるのを感じたかと思うと、湿布の端を咥えて、
それをゆっくり剥がしていく。
「ああ…!」
ぺりぺりと剥がれていく感触に声を上げる。
中嶋さんの愛撫で 粘着力は弱くなっていて痛くはなかったけれど、
乳首がひっぱられていくのが たまらなくて。
ゆっくりと、ひとつづつ中嶋さんは剥がしてくれる。
そして楽しそうに、露になった俺の乳首を見つめて。
「真っ赤になってるな」
「ああ!!」
いきなり強く、乳首を直につかまれた。
はじめて直にくる刺激に、俺は大声を上げてもだえてしまう。
湿布の感触がまだ残り、弄られすぎて敏感になってしまったそこは。

「こんなに立ち上がって…少し大きくなったんじゃないか?」
「ひ、や、いやぁ!」
人差し指と親指で先をつまみ、思い切り引っ張られて。
「い、いたっい…っ!」
ちぎれちゃうんじゃないかって思う程引っ張られて、俺は悲鳴を上げる。
なのに、俺の身体。
「乳首だけでこんなに感じてくれるとはな。
やはりお前は教えがいがある」
引っ張られたまま、左右に細かく揺さぶられて。
俺は痛いだけじゃない 悲鳴を上げていた。
「…いい子だ」
「あ…っあ」

今度は大きな手で両方の胸ごと強くつかまれて、親指の腹で乳首を揉みつぶされる。
俺は身体を反り返らせて、涙を流して喘いでいた。
「ひっ…、い…っ!」
「啓太は痛い方が好きだな」
つぶれちゃうんじゃないかというほど押しつぶされて、俺はかぶりを振って声を上げた。
強くにぎったままの自分のソコから、熱いものが吹き出るように出てくる。
くく、と耳元で笑われるそれだけで、腰が動いてしまう。
「も、も…う、だ、め…っ!」
もう、自分のを握っているのは、イッてしまうのを止めようとしているからだった。
両手で握りこんでも、もうもちそうにない。
「イきたいか?」
耳もとで、唇を押し付けられながら囁かれ、もう俺は泣きながらコクコクと頷くしかできない。
「じゃあイけよ、俺の手の中にたっぷり出せ」
腹につく程のソレの上に、触れるか触れないかのところで中嶋さんの手がかざされた。
「俺の手に向かって出すんだ」
「いやぁ…っ!」
首を振る。
だけど、中嶋さんの大きな手で、アソコを包み込むようにされて。

俺。
俺、もう。
「う…っ、あ…っっ」
手が、止まらない。
止まってくれない。
涙でぼやける目で、俺は中嶋さんのその手を見ながら。
「―――ぁ――――!!」
腰を突き出し、先端が中嶋さんの手のひらに触れたと思った瞬間、
熱いものをその手に向けて噴き出していた。
何度も何度もこみ上げては、腰を揺らしてその手の中に射精する。
中嶋さんの手が、俺の白いので汚されていく…。


楽しそうに微笑みながら、荒い息のままの俺の口に、白い液体にまみれた手をかざした。
「舐めろ」
頭がぼうっとしたままで、全身から力が抜けて何も考えられない俺は、
口を開けて舌を出し、その手を受け入れる。
「う…ぅ…」
く…と笑い声が聞こえてくる。
ぴちゃぴちゃと苦いそれを無心で舐めて、中嶋さんの手を綺麗にしようとするけれど、
途中で手が口から離れていき、残りを中嶋さんが舐めた。
「あ…」
赤い舌が見え隠れし、俺のを丹念に舐めあげていく。
俺は、すべて舐め終わるまで中嶋さんの舌から目が離せずにいた――――  


中嶋さんは俺の制服を取り出してきてくれて、 俺が着替えてしまうまで 無言だった。
「あ、あの…中嶋さん…」
両手で持っていた臣さんの体操着を見つめている。
「ごめんなさい、俺…」
「他の男に触れられたくないと言ったな」
いきなりそう言われて、俺は驚いて首を縦に動かした。
「はい、俺、中嶋さん以外は絶対にいやですっ」
「他の男のものにも触れるな」
「え?」
「体操着など…」
「わっ…」
突然制服の上から、大きな手で胸をつかまれて、俺は身体をよじる。
まだ違和感を感じる胸から、またさっきの事を思い出してしまいそうになり、
俺はあとずさりした。
それを見て、綺麗な口をゆがめて中嶋さんが笑う。
「まあ、乳首だけは守ってやったがな」
「…そ…」
それって――――
「…だから…あんなものつけたんですか…っ?」
そんなことで、俺、あんな思いして―――

「…中嶋さん、ひどい…」
「おかげでたっぷり楽しめただろう?」
眼鏡の奥の瞳がからかうように俺を見つめて、言い返せなくて口をつぐんだ。
しかも俺、何顔赤くしてるんだよっ。
「次からは俺のを着ろ。わかったな」
俺は、何も言えずただ頷くしかなかった。



それから数週間後。
また俺は、体育の授業を抜け出して、学生会室にいた。
決して中嶋さんの体操着を借りたかったわけじゃないんだけど。
また忘れてしまって、本当に中嶋さんに借りてしまった。
だけど。
だけど。
―――借りなければよかった。
俺は激しく後悔していた。
中嶋さんの匂いに包まれて、肌に触れて。

こんなので授業を受けられるわけ、ないじゃないかっ!




FIN